フットプリンツ7

キャバレーのハコの仕事(毎日レギュラーで同じ店に出演すること)は結局3,4ヶ月でやめたと思う。ぽつんぽつんと入ってくる仕事をこなしながらやっていた頃、サックスの渡辺典保さんの紹介で今度吉祥寺に新しく店がオープンするので、ハコでやってほしいという話がくる。先方のオーナーがいちおうオーディションしたいから中央大のジャズ研の部室に来てくれとのこと。そこでお会いしたのがサムタイムのオーナー故野口伊織氏であった。オーディションでOKをもらい、ピアノ、ベース、ギターで毎日入ってくれとのこと。今や老舗のライブハウスサムタイムもスタート時はハコの店だったのです。野口氏が当時話していたことには、ニューヨークのジャズの店を回って感じたのは、以外にピアノ、ベースのデュオの店が多かった。あまりジャズ色を出し過ぎないためにドラムレスにして、ジャズ好きの人以外のお客さんにも来て頂けるような店にしたいとのこと。当時の自分はオーソドックスにドラムスが入ったトリオやカルテットをやりたかったので、その点は不満だったのを覚えている。オープンして一年ぐらいした頃か、お店でケニードリューとペテルセンのデュオを呼んだ。それまでマッコイタイナーグループ等のコンサートは何度か行ったがピアノのすぐ近くで鍵盤を走る指を見ながらのジャズライブは初めてで興奮したものだ。その後ハンクジョーンズのソロピアノも鍵盤のすぐ後ろで見ていたので、あの細長い指でテンスのスウィングベースを引くのを目の当たりにして、これまた強烈な印象を覚えた。オープニングはヤードバードスーツだった。私はまったく知らなかったマリアンマックパートランドという女流ピアニストが遊びに来ていて一曲ヒアーズザットレイ二ーデイを弾き、とても素晴らしかった。その後もレイブライアントのソロ、デュークジョーダンとロイへインズ等、当時バリバリだった(もっともロイヘインズは今もバリバリだが)ジャズのスター達が結構来ていて、彼らを間近に聴けたということは大変ラッキーだったと思う。